COCO144の現代アート作品

COCO144の現代アート作品

僕が2017年に買ったCOCO144の作品が、ついに渋谷に並んだ

1. 今日の対象

展示タイトルは「Letters and Circles / 文字と円」。 1980年代のプエルトリコで作られた、COCO144の紙の作品です。

壁に8点、別の壁に5点。計13点が黒いフレームに収まって、渋谷・桜丘のLGSA by EIOSに並んでいました

。

これは、僕のコレクションです。

2017年に15点まとめて買った作品のうち、8点が公の場所に展示されています。残りの5点はエンリコ君のコレクション。コレクターとして、こういう瞬間があります。自分の手元にあったものが、文化の文脈に置かれる瞬間

。

2. なぜ今これを見るのか

2017年。アートを買い始めたばかりのころ。

大山エンリコイサム君に誘われて、ニューヨークのクイーンズにあるCOCO144の家に遊びに行きました。お酒を飲んで、盛り上がって、ご機嫌になったCOCO144が80年代の作品を見せてくれた。その場で全部譲ってほしいと頼み込みました。

ストリートアートが大好きだったんです。COCO144と会って、ストリートアートの歴史の始まりを直接学んだ。これを買わなきゃ何を買うんだ、という気持ちになりました。

まだ「コレクション」というレベルの話でもなかった。でもあの夜はコレクターの気分でした。

その作品が今、エンリコ君がつくったLGSA by EIOSの壁に掛かっています。とてもメモリアルな展示です。

3. 何が価値を作っているのか

展示初日、来日していたCOCO144本人と話しました。

1985年の作品だと教えてくれました。ニューヨークからプエルトリコに戻っていた時期に描いたもの。そして彼がニューヨークに戻ったとき、後輩たちが先に売れていた。バスキアたちが。

タギングのキングだった男が、時代に取り残された。

COCO144という名前の「144」は、彼が育ったハーレムの144丁目から来ています。「COCO」はプエルトリコ系のニックネーム。タグに王冠を添えたスタイルでニューヨーク全域に名を刻み、ステンシルをグラフィティに持ち込んだ最初のライター。1973年にはUnited Graffiti Artistsを共同創設し、地下鉄アートをソーホーのギャラリーに持ち込んだ。この人がいなければ、今日のストリートアートの系譜は成立しません。

1985年のプエルトリコで描かれたこの作品は、彼のふたつのルーツが交差した場所で生まれました。

作品の構造について。

この作品のすごさは、技法にあります。先に背景のカラーを描いてから、円のモチーフをシルクスクリーンで印刷している。背景は一点一点違う色で手描きされており、その上にシルクスクリーンの円が重なる。偶然性と計算が同居した、かなり意識的な制作です。

8点が横2列で並ぶ大きな壁。背景の色はそれぞれ違います。白、緑、ピンク、青、深いグレー、赤とオレンジ……。シルクスクリーンで刷られた円の運動は共通しながら、背景の色によってまったく違う表情を持つ。

別の壁の5点は、より暗く、より複雑なトーンです。複数の円が絡み合い、線が交差する。

紙の質感に、40年の時間が出ていました。経年の密度は、新しい作品には出せません。

4. 今の相場感

COCO144の作品がオープンなP2P市場に出ることは、ほとんどありません。

知名度の問題ではなく、流通の問題です。コレクター間の相対取引で動いており、個人間売買の成立価格として参照できるデータがほぼ存在しません。

ただ、今回の展示には市場的に意味があります。作品が「コレクター個人の保有」から「美術史の文脈を持つギャラリーでの展示」に移行した瞬間を、リアルタイムで見ています。作品が「誰かが持っているもの」から「文化的に位置づけられたもの」になるタイミングは、一度しか来ません。

5. 何を観察するべきか

LGSA by EIOSは、作品だけを見る場所ではありません。

展示エリアと書架エリアが同じ空間にあります。書架には70〜80年代のニューヨークを中心としたストリートアートの資料が約500点。写真集、フライヤー、映像、プロダクト。これが本当にすごいコレクションです。ストリートアートの歴史を体系的に見られる場所が日本にほとんどない中で、ここは別格です。絶対に棚も見てください。

作品を見て、棚の資料に戻る。その往復の中で、COCO144の作品が何を意味するかが立体的にわかってきます。

壁のキャプションにある「Letters and Circles / 文字と円」というタイトルも、ぜひ意識して見てほしい。文字(タグ)がどう円に変換されたか。その問いを持って作品の前に立つと、見え方が変わります。

6. コレクションとして持つ意味

高校生のとき、祖父からロレックスのオイスターパーペチュアルデイトをもらいました。特別高価なものではなかったけれど、ずっと手放さなかった。売ろうと思ったことも、正直あります。でも手放せなかった。好きだったから。記憶があったから。

COCO144の作品も、同じ感覚で持ち続けています。

2017年のあの夜に買った理由は、価格ではありませんでした。ストリートアートが好きで、その歴史の起点にいた人間と直接会って、話して、作品を見た。これを買わなきゃ何を買うんだ、という気持ちでした。

今回、その作品が渋谷の壁に掛かっていて、本人がその前に立っていました。僕もその隣に立ちました。

コレクションというのは、こういう瞬間のためにあると思っています。作品が自分の手を離れて文化の中に置かれるとき、買った理由が正しかったかどうかがわかります。今回はそれがわかった日でした。

これから彼の功績が正しく認められる時代が来ます。タグに王冠を添えてニューヨーク全域を制し、ステンシルを発明し、ストリートをギャラリーに持ち込んだ。その人間が1985年にプエルトリコで紙に描いた作品を、今自分が持っている。この事実は、時間が経てば経つほど意味を持ちます。

7. まとめ

COCO144、1985年、プエルトリコ。

僕が2017年に買ったその作品が、ついに渋谷で展示されています。本人も来ていました。話しました。写真も撮りました。

好きだから買った。持ち続けた。その作品が世界のストリートアート史の文脈に置かれました。

これがノスタルジー投資の、一番シンプルな答えだと思っています。

観察のヒント: LGSA by EIOS、渋谷桜丘町11-6 DAGビル401号。木金土日13〜18時、予約不要。展示と書架、両方を見てください。この場所が次に何を見せるかを追い続けること。それがアートコレクションの目を育てます。

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