「もの派」を代表するアーティスト・李禹煥|3億円超で落札された作品も

「もの派」を代表するアーティスト・李禹煥|3億円超で落札された作品も

1960年代末から1970年代初頭にかけて、日本国内のアートシーンで盛り上がった「もの派」。その中心的存在とした活躍したアーティストが李禹煥(リ・ウファン)です。李禹煥の作品は、現在もアートオークションでしばしば出品されており、コレクターや投資家から注目を集めています。今記事では李禹煥の経歴や作風、アートオークションでの注目度などを広くご紹介します。(TOP画像引用:StudioLeeUfan)

李禹煥の経歴

1956年に来日。現代美術への関心を深める

1936年に韓国・慶尚南道で誕生した李禹煥は幼少期から書や絵を習い、点の付け方や線の引き方などの基本技術を習得します。



成長した李禹煥は、ソウル大学校美術大学に入学。1956年に来日して、日本大学文学部に編入し哲学を学びました。



彼のバックグラウンドには、美術だけではなく東洋思想・西洋思想に基づく哲学が存在することが特徴です。多様な思想を貪欲に学んだ李禹煥は、1960年代を迎えると現代美術に関心を深め、1960年代後半には本格的に制作を開始します。

「もの派」の中心的作家に

李禹煥は、高松次郎や関根伸夫といったトリックアートの旗手が描く作品に関心を寄せ、錯視表現を作品に取り入れます。



当時の代表的作品『第四の構成A』は、メビウスの輪を平面化し蛍光塗料で描かれており、表現技法の”錯視”と表現の背景にある”思想”を共に感じられる作品です。



その後、李禹煥は自然に人工素材を組み合わせた作品を精力的に発表するようになります。その作風は「もの派」と呼ばれるようになり、李禹煥は「もの派」をリードする存在となりました。



また、李禹煥は著述も展開。1969年刊行の論考『事物から存在へ』は、美術出版社芸術評論に入選。1971年刊行の『出会いを求めて』は「もの派」の理論を支える重要文献として知られています。

安藤忠雄とのコラボで美術館を設立

2010年、李禹煥は香川県直島町に安藤忠雄に設計を依頼し『李禹煥美術館』を設立。山と海に囲まれた美術館は半地下構造の建物で、館内には安藤忠雄設計によるインスタレーション的な装飾が施されています。



1970年代から現在までの絵画・彫刻が展示されているこの美術館は、まさに「もの派」の旗手である李禹煥の作風を存分に表した美術館です。

世界各国で展覧会を開催

世界から注目を集める李禹煥は、各国で展覧会を開催しています。



2011年にはアメリカ・ニューヨークのグッゲンハイム美術館、2014年にはフランスのヴェルサイユ宮殿、2019年には同じくフランスのポンピドゥー・センター・メッスでそれぞれ個展を開催するなど、活躍の場を広げました。



日本でも、ここ最近改めて注目を集めており、2022年には東京・国立新美術館で初となる大回顧展を開催。日本国内での美術館個展は、2005年に神奈川・横浜で行われた『李禹煥 余白の芸術展』以来です。



直近では、2022年12月~2023年2月に兵庫・兵庫県立美術館で西日本初となる大回顧展も開催しました。

李禹煥の作風-「もの派」とは

李禹煥は芸術をイメージや主題、意味の世界から解放し「もの」と「もの」、「もの」と「人」との関係を問いかけています。



木や石などの自然素材と、紙・鉄材・ガラスなど人工的な製品を「もの」として認識し、あえて手をほとんど加えず、ただあるがままに設置することで生まれる「作品の余白」が、大きな特徴です。



アーティスト(主体)と作品(客体)との関係をあらためて見つめ直した作品の背景には、表現だけでなく東洋・西洋の哲学的な思想が含まれています。

『風景』

I, II, IIIからなる三連画で、李禹煥の初期代表作です。1968年に東京・国立近代美術館で開催された『韓国現代絵画展』に展示されました。



キャンバスにピンクの蛍光塗料を用いて描かれたこの作品は、視覚を攪乱させるような錯視効果を強く喚起させることが特徴で、「もの派」に移行する前の作風が表れています。

『関係項』

1968年頃から制作されている『関係項』シリーズは、『関係項-棲処(B)』『関係項―アーチ』『関係項-無限の糸』など、現在まで数多くの作品が創られています。



『関係項』シリーズは、石と鉄・ガラスを組み合わせた「もの派」らしい立体作品で、それぞれの素材にはほぼ手が加えられていません。



「もの」と「場所」、「もの」と「空間」、「もの」と「もの」、「もの」と「イメージ」の関係が、作品を通じて表れています。

『線より』『点より』

1971年にフランスで石の彫刻を発表した李禹煥は、ヨーロッパやアメリカでの旅を経て、帰国後に絵画を制作し始めます。



その色彩や点・線のモチーフによりシステマチックな印象を受ける『線より』『点より』は、手を加えることを最小限に抑え、余白の広がりと空間の存在を感じさせます。

『風より』『風と共に』

1980年代から制作し始めた『風より』『風と共に』は、『点より』『線より』で描かれたシステマチックな表現から解放されています。



荒々しい筆遣いにより、生み出された空間が特徴的です。

『照応』『対話』

1990年代に制作された『照応』は筆触が短く、動きが平行か垂直に限定されています。続く『対話』ではさらに描画が限定されました。



ストロークによる筆跡と余白に緊張感が生まれている『照応』や『対話』は、空間を意識した李禹煥の作品群でも、より“描かれていない空間”を強調しているように感じさせます。

李禹煥作品の落札価格

世界から高い評価を李禹煥の作品は、オークションでも取引されています。中には、億単位で取引された作品も。アート投資やコレクターの方々は、ぜひチェックしてください。

2021年『東風』

2021年に韓国で行われたソウルオークションでは、『東風』が約3億1,000万円で落札。



『東風』は2019年10月に約2億円で落札された作品で、この間わずか2年弱で1億円以上の高値をつけるほどに高い評価を受けました。

2014年『線より』

2014年には、『線より』がアメリカ・ニューヨークのサザビーズオークションにて、約2億3,000万円で落札。

2012年『点より』

2012年には、『点より』が香港で開催されたオークションにて約2億1,000万円で落札。

国内アートオークションでの取り扱い

李禹煥の作品は、日本で行われるアートオークションでも取引されています。時には数千万円で取引されている人気作家の一人です。



2022年10月に行われたSBIオークション「Modern and Contemporary Art」では、『項B』が4,025万円で落札。2023年3月に行われたSBIオークション「Tokyo Contemporary: Redefined」では『照応』が3,910万円で落札されました。

<参考記事>草間彌生が1億超えで落札額TOP、井田幸昌も記録更新。「SBIアートオークション」3/11

SBIアートオークションが2023年3月11日(土)、東京国際フォーラムにおいて「Tokyo Contemporary: Redefined」を開催しました。この記事では、エスティメートに対して実際の落札価格が高かった作品TOP5をご紹介。またそれ以外に落札価格が高かった作品・作家TOP3を紹介します。

まとめ

今回は「もの派」を代表する作家・李禹煥について紹介しました。非常に哲学的なテーマを持つ作品群は、近年注目されているミニマリスト思考にも共通する点があり、人気を集めているアーティストです。



現在も活躍中の李禹煥が手掛けた作品は、オークションでも非常に高い価値で取引されています。ぜひ今後も、彼の動向をチェックしてみてはいかがでしょうか。