【ロレックス サブマリーナ 年代別シリーズ】最終回・第6回

【ロレックス サブマリーナ 年代別シリーズ】最終回・第6回

Ref.114060 / 116610 / 124060 / 126610(2010年〜現行)——なぜ現行品はこの価格なのか

1. 今日の対象

先週はRef.16800、168000、16610——サファイアクリスタルが定着し、Ref.16610でCal.3135が長期採用された、現代化の約30年を扱いました。トリプルゼロという謎、カーミットという誕生日プレゼントの話でした。

今週は最終回。Ref.114060、116610、126610です。

この3モデルは、サブマリーナが「ヴィンテージの記憶」を引き継ぎながら「今この瞬間の道具」として完成させた、現行に最も近い世代です。セラミックベゼルの採用、ケースの大型化、41mmへのサイズアップ——半世紀以上続いた40mmという「完成されたサイズ」が、ついに変わった時代でもあります。

このシリーズの締めくくりとして、なぜ現行品が今の価格水準にあるのかを構造として理解する回にします。

2. なぜ今これを見るのか

現行モデルRef.126610LNは、日本国内定価168万3,000円に対し、中古販売市場では230万円台〜270万円前後で取引されており、依然としてプレミア価格を維持しています。新品の定価より中古相場の方が高い——この状態が何年も続いています。

なぜ今も作り続けられている時計が、定価を超え続けるのか。それは単なる人気の話ではありません。サブマリーナという70年以上の歴史を持つ時計が、今のロレックスというブランド全体の需給構造の中でどう位置づけられているかを理解することが、このシリーズの最後にふさわしいテーマです。

3. 何が価値を作っているのか

セラミックベゼルという耐久革命——Ref.116610とRef.114060

2010年、ステンレススチールのサブマリーナー デイトはRef.116610LNへとモデルチェンジしました。最大の変化はベゼルです。それまでのアルミ製インサートから、耐蝕性・耐傷性に優れたセラミック製の「セラクロムベゼル」へと変更されました。

セラクロムベゼルは紫外線による退色がほとんどなく、傷もつきにくい。先週まで見てきたヴィンテージモデルが「退色したベゼル」を味として評価されたのとは対照的に、この世代から「経年劣化しないことそのもの」が価値になりました。

夜光塗料もスーパールミノバから、より長時間発光するクロマライトへと変更され、青く光るようになりました。発光時間は従来の約2倍に延長されています。

ノンデイトモデルは2年遅れて2012年、Ref.114060として登場しました。14060以降のノンデイト系は、14060、14060M、114060へと約30年にわたり40mmケースを維持しました。40mmのノンデイト系という流れで見れば、1959年のRef.5512以来、2020年の124060登場まで約60年続いた伝統でもあります。このサイズ感は完成されたケースサイズと呼ばれ、長きにわたりサブマリーナの定番として親しまれてきました。

ブレスレットには、工具なしで最長2cmまで長さ調整ができるグライドロックエクステンションシステムが採用され、ダイバースーツの上からでも着用しやすくなりました。ムーブメントにはパラクロムヒゲゼンマイが採用され、耐磁性・耐衝撃性が向上しています。

41mmへの転換——Ref.126610という決断

2020年、サブマリーナーは全コレクションでモデルチェンジが敢行されました。Ref.126610LN(デイト)とRef.124060(ノンデイト)です。最大の変更点は、長らく40mmケースが採用されてきたサブマリーナーが、初めて41mmへとサイズアップしたことです。

「1mm」の違いは誤差の範囲だと思われがちですが、ケースサイズが大きくなると時計全体のバランスが変わるため、大きな雰囲気の変化をもたらします。ケースの大型化は行われましたが、厚みに関しては旧型とほぼ同様の厚みを保っており、41mmになっても無骨になりすぎない、スタイリッシュなフォルムが保たれています。

ムーブメントは3100系から3200系へと進化し、パワーリザーブが48時間から70時間へと延長されました。文字盤6時方向の「SWISS MADE」の文字の間にロレックスの王冠マークが入るようになったことも、新旧を見分ける最大のポイントです。

この変更を「サブマリーナの完成形が崩れた」と見るコレクターもいれば、「現代的な進化」と見るコレクターもいます。どちらの立場を取るかで、自分が116610系を選ぶべきか126610系を選ぶべきかが決まります。

カーミットからハルクへ——グリーンサブの系譜の続き

先週扱ったカーミット(Ref.16610LV)の後継として、2010年にRef.116610LVが登場しました。前モデルRef.16610LVは、2003年にサブマリーナ誕生50周年を記念して登場し、2010年まで生産されたグリーンサブでした。Ref.116610LVではベゼルだけでなく文字盤もグリーンとなり、その鮮烈なカラーリングから通称「ハルク」と呼ばれました。

2020年、Ref.126610LVへの移行に伴い、グリーンサブは再びブラック文字盤とグリーンベゼルの組み合わせに戻りました。先代Ref.116610LVがオールグリーンであったのに対し、ブラック文字盤が採用されたことになります。発売当初はブラックモデルに後塵を拝していたグリーンサブですが、その後ヒット商品となり、今では不動の人気を確立しています。

ハルク(Ref.116610LV)は2010年に登場し、2020年に生産終了しました。ロレックスはモデル別の生産本数を公表していないため、「製造本数が少ない」と断定するより、生産終了と良質な個体の減少、そしてグリーンダイヤル特有のコレクター需要が重なり価格を支えていると見るのが自然です。現在は買取で250万〜320万円前後、中古販売では300万円台前半を中心に推移しています。

なぜ定価を超え続けるのか——現行ロレックスの需給構造

現行モデルが定価を超えて取引される現象は、サブマリーナに限った話ではありません。ロレックスというブランド全体が、正規店での「品薄」を構造的に抱えています。

正規店での入手が困難である一方、ブランドとしての知名度と信頼性は世界的に確立されている。この需要と供給のギャップが、中古市場でのプレミア価格を生み出しています。Ref.126610LNの定価が168万3,000円であるのに対し、中古販売市場では230万円台〜270万円前後で推移しているという状況が、この構造を端的に示しています。

ヴィンテージモデルの価値が「時間が作った希少性」であるのに対し、現行モデルの価値は「今この瞬間の入手困難性」です。性質はまったく異なりますが、どちらも「観察すべき需給の物語」であることに変わりはありません。

4. 今の相場感

Ref.114060(ノンデイト) 国内中古販売では180万〜220万円前後が中心です。状態や付属品、年式によって差があります。生産終了後も高値を維持しており、シンプルなノンデイト仕様への支持は根強いものがあります。

Ref.116610LN(デイト・ブラック) 国内中古販売では190万〜220万円前後が目安です。状態のよい個体や高年式個体は200万円を超える水準で推移しています。10年間サブマリーナの顔として親しまれたモデルで、リセールバリューの高さは健在です。

Ref.116610LV(ハルク) 買取相場は250万〜320万円前後、中古販売市場では300万円台前半〜半ばを中心に推移しています。生産終了後も強い需要が続いています。

Ref.126610LN(現行・デイト) 日本国内定価は168万3,000円。中古販売市場では230万円台〜270万円前後で、定価を上回る水準が続いています。正統派のデザインと安定した需要により、現行ロレックスの中でもリセールバリューはトップクラスです。

Ref.126610LV(現行・グリーンサブ) 日本国内定価は176万4,400円。中古販売では260万〜280万円台の掲載も見られ、LNより高いプレミアムがつく傾向があります。今なお品薄傾向にあり、高い相場水準をキープしています。

5. 何を観察するべきか

40mmか41mmかを自分の基準にする ケースサイズの1mmの違いは、写真ではわかりにくいですが、実際に着けると体感差があります。どちらのバランスを好むかは、観察を始める前に一度自分の腕で確かめておくことをおすすめします。

王冠マークの有無で世代を見分ける 文字盤6時位置の「SWISS MADE」表記の間に王冠マークがあるかどうかが、新旧モデルを見分ける最も簡単なポイントです。これだけ覚えておけば、写真だけでも116610系か126610系かが判別できます。

ハルクとカーミットの違いを理解する グリーンサブには「文字盤までグリーン(ハルク)」と「ベゼルのみグリーン、文字盤はブラック(カーミット系)」の2系統があります。この違いを知っているかどうかで、コレクターとしての解像度が大きく変わります。

買取相場と販売相場の両方を見る 中古市場の相場を観察するときは、買取相場(売る側の価格)と販売相場(買う側の価格)の両方をチェックする習慣をつけてください。この差がそのまま、その時計の市場での流動性を表します。

6. コレクションとして持つ意味

高校生のとき、祖父からロレックスのオイスターパーペチュアルデイトをもらった。特別高価なものではなかったけれど、ずっと手放さなかった。売ろうと思ったことも、正直ある。でも手放せなかった。好きだったから。

この半年間、第1回の6204から今日の126610まで、サブマリーナの70年以上の歴史を一緒に追ってきました。クラウンガードのない潔さから、トロピカルダイヤルという時間の逆説、30年作り続けられた完成形、赤と白のデイト、サファイアクリスタルの革命、そして41mmへの転換。

どの世代にも、その時代を生きた人の記憶があります。1953年に初めて海に潜った人、1969年に赤サブを手にした人、2003年にカーミットを買った人、そして今日、現行モデルを正規店で迎えた人。70年以上にわたって、同じ「サブマリーナ」という名前のもとに、無数の個人的な記憶が積み重なってきました。

コレクションとして時計を持つ意味は、結局のところ「自分がどの時代の記憶を選ぶか」という問いに尽きます。ヴィンテージの時間の蓄積を選ぶのか、現行品からこれから始まる時間を選ぶのか。どちらにも正解はありません。

7. まとめ

全6回にわたって、ロレックス サブマリーナの系譜を年代順に追ってきました。

1953年の誕生、クラウンガードの導入、30年間のロングセラー、デイト機能という転換、サファイアクリスタルという現代化、そして41mmへの最新進化。サブマリーナという一本の時計が、これほど多層的な物語を持っていることを、このシリーズを通じてお伝えできたなら嬉しいです。

何を買うかより、何を知っているか。それがこのシリーズを通じて一貫して伝えたかったことです。観察を続けてください。市場は、知っている人にだけ次の物語を見せてくれます。

来週からは、新しいシリーズを始めます。お楽しみに。

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